問題の概要
新見公立大学の小論文は、推薦入試と一般入試・中期日程では、「要約+小論文」というオーソドックスな問題ですが、一般入試・前期日程では、新学力観をふまえて、よく練られた良問が毎年出題されています。複数の資料―文章だけではなく、会話文、図表、地図等―を読み取り、それらを総合して推論し、理由を考え、場合によっては解決策を示すという問題は、読解力とともに、思考力・判断力を試そうとするものです。
また、相手にわかりやすく、かつ納得させるためにどのように表現するかが試されています。昨年度は、大学教授と学生達の会話文と動物園の地図を基に推論したり、2人の学生の行動について順を追って述べたりする問題が出題されました(弊社の「2018年度小論文指導研修会」資料を参照)。今年度は、学園祭のイベントに関する文章と19のメモに基づいて、推論して答えるという問題です。問いのはじめに、「設問には問題文(メモ用紙の内容を含む)と各設問のみに基づいて推論し答えること。」と条件が示されていますので、これらをふまえずに書いた推論は根拠のないものと見なされ、採点の対象となりません。逆に、19ものメモがありますので、さまざまな根拠が考えられます。どれを、どう使うと適切かを丹念に検討しましょう。
また、「解答上の注意」に、「記述の分量は採点の対象としない。」とありますので、推測した内容やその理由については、できるだけ簡潔に書くようにするといいでしょう。
問題の考え方
問1
お笑い芸人出演イベントの観客数の増減に関係する要因について、ほとんど変わらない要因から2つ、状況によって変化する要因から2つを、問題文とメモ用紙の内容から選び、それぞれの理由を説明するという問題です。要因をあまり詳しく説明してしまうと、その理由とほぼ同じ内容になる可能性がありますので、要因はできるだけ短い言葉にして、それが要因になり得る理由を説明するようにしましょう。
それでは、観客数の増減に関係する要因とその理由について、順番に見ていきましょう。
メモ2 ポスターによる宣伝
→ 毎年同じ枚数を印刷しほぼ同じ場所に掲示している。
メモ6 宣伝カーによる広報
→ 過去の経験では、1回目で20人ぐらい、2回目で10人ぐらい地元の観客数が増えた。
3回目以降はあまり増えなかった。
メモ6 地元ケーブルテレビの広報
→ 1週間前から毎日宣伝したときは、地元の観客数が40人位増えた。
メモ7 お笑い芸人の「お笑いグランプリ」でグランプリの獲得や上位入賞
→ 他大学の経験から、グランプリの獲得や上位入賞があれば、学生の観客はおよそ1.5倍、
ファンの観客はおよそ1.1倍、その他の観客はおよそ1.4倍になっている。
メモ8 クラスに熱烈なファンがいる場合
→ クラスに熱烈なファンがいると、学生同士の直接的・間接的なコミュニケーションに
より、チケットの売り上げが増える。
メモ10 チケットの値段
→ チケットの値段と売り方は、長い間変えていない。
メモ11 同窓会役員の出席
→ 同窓会役員は、毎年同じ位の人が出席する。
メモ12 大学の規模
→ 学生数500人の大学であり、増減があったとは書かれていない。
メモ13 当日の天候
→ 雨天の場合は、地域からの観客を中心に20%程度減る。
〇ほとんど変わらない要因
「ポスターによる宣伝」「宣伝カーによる3回目以降の広報」「チケットの値段」「同窓会役員の出席」「大学の規模」が考えられます。そのうち、理由がはっきりしたものから2つを選ぶといいでしょう。
〇状況によって変化する要因
「宣伝カー・ケーブルテレビによる広報」「お笑い芸人のグランプリの獲得や上位入賞」「クラスに熱烈なファンがいる場合」「当日の天候」が考えられます。その中から、理由がはっきりと書かれている「宣伝カー・ケーブルテレビによる広報(「広報の有無」とするとよい)」と「お笑い芸人のグランプリの獲得や上位入賞」の要因について説明するといいでしょう。
問2
今年出演する芸人が、「お笑いグランプリ」に上位入賞を果たした場合と果たさなかった場合の観客数を予想し、その理由とともに説明する問題です。
まず、「昨年の観客数、過去の経験と現在の状況、他大学の経験をもとに」とあるので、メモからそのことが書かれているものを探しましょう。
メモ9 昨年は、386人の観客があった。うちわけは、学生が154人、その他が232人であった。
メモ3 アンケート調査から観客を分類すると、学生が40%程度、学生の家族・卒業生・地域の
人達が約40%程度、芸人のファンが20%程度と考えられる。
このことから、昨年の観客数は386人、内訳は学生154人、学生の家族・卒業生・地域の人達が154人、ファンが78人程度と考えられます。これがベースになる数字です。
次に、「2週間前に宣伝カーを2回走らせ、加えて地元テーブルテレビによる広報も1週間前から毎日実施した」ことによる増加数を考えてみましょう。
メモ14 昨年は有名芸人だったので、ポスター以外は広報しなかった。
メモ6 過去の経験では、2週間前に宣伝カーを走らせると1回目で20人くらい、2回目で10人くら
い地元の観客数が増えた。地元ケーブルテレビで1週間前から毎日宣伝したときは、地元の
観客数が40人位増えたと思う。
とありますので、宣伝カーによって30人、ケーブルテレビの宣伝で40人、合計70人程度増えることになります。さらに、「大学祭当日は雨が降らなかったものとする」とありますので、雨天による減少はないことになります。
つまり、386人+70人程度で、450人程度の観客が見込まれます。
出演する芸人が、「お笑いグランプリ」に上位入賞を果たした場合について考えてみましょう。
メモ7 特別な広報活動による増加分も含めてグランプリの獲得や上位入賞があれば、学生
の観客はおよそ1.5倍、ファンの観客はおよそ1.1倍、その他の観客はおよそ1.4倍になる。
とありますので、学生は231人、ファンは85人、地元が215人、合計531人程度になると見込まれます。これに、広報活動による増加分70人程度を加えると、600人程度の観客が見込まれます。ただ、メモ7の「特別な広報活動による増加分も含めて」をどう読むかによって観客数は変わります。つまり、「増加分も含めて倍数する」とも読み取れますので、その場合は、学生は231人、ファンは85人、地元が315人、630人程度になります。
600人程度、630人程度、どちらも正解になると思われます。