担当者のつぶやき 駅のホームと小論文

こんにちは。担当者Uです。



突然ですが問題です。


「酔った客が駅のホームから線路に転落する事故が後を絶たない。この事故を減らすためにはどうするべきか、あなたの考えを述べなさい」


小論文入試でこんな問題が出た…という話ではありません。あしからず。

お酒に酔ってホームに落ちるなんて、高校生のみなさんからすれば「そんなに飲むなよ!」と言いたくもなるのでしょうが…。
でも、転落事故が起きているのは事実ですし、こんな理由でお客さんの命が犠牲になるのは避けたいところですよね。
さあ、どうすればいいでしょう?



この問題、実は既に対策が進められています。JR西日本の取り組みです。

Uの最寄り駅でもこの取り組みがなされていたので、写真を撮ってきました。


IMG_0983


わかりますか?
ベンチに座った人の向きが、線路と平行になるようになっているのです。


どうしてこれだけで転落防止につながるのか?
それについては、以下の記事でくわしく解説されています。


2015年3月24日「神戸新聞NEXT 酔って線路に一直線 ホーム転落事故の9割 JR西が調査」

一部の新幹線の駅のように、ホーム全体に壁を作るという方法も考えられますが、とてもお金がかかるので、すべての駅に設置するのは大変です。
でも、ベンチの向きを変えるだけなら、それほどお金はかけなくてすみそうです。
これだけで少なくとも酔った人の転落防止を防ぐことができるのであれば、大きな改善ですよね。



みなさんに注目してもらいたいのは、「酔客の事故を科学的に分析」している、というところです。


小論文のよくない解答例として代表的なのが、「私たち一人ひとりが気をつけるべきだ」というものです。


この答え、「間違い」とは言い切れません。

しかし、そもそもどんな気持ちでいれば「気をつけた」ことになるのでしょうか。
いろんな人に、どんな方法で気をつけさせればいいのでしょうか。
「気をつける」だけで本当に問題は解決されるのでしょうか。

…と、いろんな疑問がわいてきて、結局「それって説得力ないよね」ということになってしまうのです。


しかし、このように酔ったお客さんの動きをしっかり分析し、その傾向をつかんだうえで対策を打ち出していたら、ものすごく説得力がありますよね。

もちろん、実際の小論文の試験において、このような「分析」ができることはまれですが、少なくともこうした科学的な分析が、提案する解決策の説得力を高める材料になるのだということは重要です。



ある社会問題が提示し、その解決方法を提案するような小論文の構成を「問題解決型」と言いますが、この問題解決型の構成をとる場合に、「問題点の分析・考察」が重要となります。
何が問題なのか、なぜ問題が生じてしまうのか、をしっかり考えることができたら、おのずと解決策も見えてくるからです。

小論文の問題を解く際も、こんなことを考えながら構成を練ることができたらいいかもしれません。

担当者のつぶやき 古い本もおもしろい

こんにちは。担当者Uです。

ふと思い立って、昔買った村上春樹さんのエッセイ『村上朝日堂はいかにして鍛えられたか』を読んでいます(そう言えば、以前も村上さんの記事を書いてしまいましたね…最近マイブームです)。
国語の教科書に採択されたことのあるエッセイも載っている、なかなかおもしろい本です。

元ネタは1995年~1996年の『週刊朝日』に掲載されていたコラムだというので、今からもう20年も前の内容の本になるわけです。
じゃあ現代に生きる私たちには役に立たない、古い内容なのかと言うと…


実はそんなことないのです。


例えば。

***********
都内の某デパートでエレベーターに乗った。そのエレベーターには、車椅子を使う人のために、低い位置に専用のボタンがついていた。(中略)
ところがエレベーターの入り口には、「車椅子ご利用の方は、なるべく付き添いの方と一緒にご利用下さい」と書かれた札がはってあった。僕はこれを読んで本当にびっくりした。
***********


さて、村上さんは何にびっくりしたのでしょう。続きはこうなっています。



***********
だってそうでしょう。車椅子のための専用スイッチをわざわざエレベーターにつけておきながら、「なるべくなら誰かについてもらって来いよな。一人で来るなよな」というものの言い方はないだろうよ。だったらはじめからそんな専用スイッチをつけなければいい。付き添いの人がいるのなら、その人が代わりに押してくれるわけだから。もし車椅子専用スイッチをつけるのなら、車椅子利用者が一人で気持ちよく買い物ができる環境を整備するべきだ。(中略)
これを書いた人は、その情けない文章を書くことによって、脚に障害を持った人の心を自分がどれほど傷つけているか、感じなかったのだろうか?
***********


うーん確かに。
この札を読んだ方の中には、「どこが問題だったのだろう?」と思った人もいるのではないでしょうか。
恥ずかしながら、Uもたぶんこの札を見せられても、すぐに村上さんのような思いに至れなかったのではないかと思います。
でも、確かに車椅子の人がこれを読んだらいい気はしないでしょうね。

それにしても、最近のデパート、エレベーターはどうなっているんでしょう。
さすがに20年も経っているのだから、このような札がないことを祈りたいものですが…。
今度、デパートに行ったら見てみます!


さて、エレベーターの話題は少し時代の流れを感じる内容でしたが、次に紹介するのは、逆に全然時代の流れを感じさせない文章です。


**********
世の中に「これからの二十一世紀、日本の進むべき道がよくわからない。見えてこない」と発言する人々がいるけれど、そうだろうか? 僕は思うのだけれど、現在我々の抱えている最重要課題のひとつは、エネルギー問題の解決――具体的に言えば、石油発電、ガソリン・エンジン、とくに原子力発電に代わる安全でクリーンな新しいエネルギー源を開発実現化することである。(中略)
でも技術的に原子力を廃絶できるシステムを作りあげることに成功すれば、日本という国家の重みが現実的に、歴史的にがらっと大きく違ってくるはずだ。「いろいろあったけど、日本はその時代やっぱりひとつ地球、人類のために役に立つ大きなことをしたんだな」ということになる。
**********


東日本大震災の後に書いたかの文章ですが、違います。1995年頃の文章です。
この主張は全く色褪せませんね。
著者に先見の明があるとも言えますし、この日本が20年ぐらい前から何にも進歩していないと言えるかもしれません。




さて、いかがだったでしょうか。
どちらも、20年前も現代も、変わらず社会で問題となっているできごとです。前者はいくぶん改善がみられているかもしれませんが、後者については変わらぬ課題として残っていますよね。
ごくごく当たり前のことですが、その本が書かれた時代も考えつつ、今にどう生かせるか、と思いながら本を読むと、また新たな発見があるものだと思いました。

担当者のつぶやき 教材制作こぼれ話

こんにちは。担当者Uです。


先日、教材の校正や、学校からいただいた答案の処理を行っていると。
向かいに座っている後輩のMさんから相談を受けました。

Mさんは、小論文模試の成績表に掲載する、「注目の時事ニュース」の原稿を作っています。

小論文模試の成績表は、こちらで紹介していますが、
このように、「注目の時事ニュース」を紹介しています。


0154a_syomoshi_seisekihyo


Mさんはこう聞いてきました。

「今度ここで『親の賠償責任、どこまで』という見出しのニュースを紹介しようと思うんですけど、このタイトルで意味わかりますかね?」



さて、高校生のみなさん、わかりますか???
正直、これだけでわかったら、普段きちんとニュースを見ている人だなぁと思います。



正解は。


ニュースダイジェストの4月10日の記事をご覧ください。



記事と一緒に読めば「なるほど」と思えるでしょうが、タイトルだけだとちょっとわかりにくいですよね。
ということで、「親の監督責任訴訟、判決」というタイトルに修正しました。
まあ、これでもそんなにわかりやすくはないのですが…
読んだ人に「このニュース、何だ?」と思ってもらい、実際にニュースダイジェストを読んでもらうことが目的なので(あ、本音をバラしてしまった)、お許しください。

でも、この「親の監督責任訴訟」は入試に出そうな気がします。
正解のない問いですが、「親の役割」と「社会」を問う、格好のテーマであるように思います。


「ニュースダイジェスト」では、このように小論文学習に役立ちそうな日々のニュースを紹介していますので、ぜひご覧ください!

入試出題傾向 更新

入試出題傾向・分析のコーナーを更新しました(会員専用コンテンツです)。

「進学Navi」サービス終了のお知らせ

会員専用サービスとして「進学Navi AO入試・推薦入試受験レポート」をご紹介しておりましたが、このたび(株)ディスコが運営する親サイト『進学Navi』のサービス終了に伴い閉鎖となりました。

長い間ご利用いただきまして、ありがとうございました。