第2回~愛知教育大学・教育学部・教育支援専門職養成課程~

問題の概要

 「年齢別人口構成図」、いわゆる「人口ピラミッド」を見て解答する「データ型」の問題です。「年齢別人口構成図」は、データの読み取り問題として、何回か出題されていますし、現代社会の資料集にも頻出ですので、誰もが一度は目にしたことがあると思います。これまでの入試では、「年齢別人口構成図から、どのようなことが読み取れるか、その問題点は何か」ということが問われてきましたが、この問題のポイントは、「20年後を予想して年齢別人口構成図を作成し、そう予想した理由を具体的に述べる」という点にあります。これまで、実際に20年後の年齢別人口構成図を作図するというものはありませんでした。さらに、どのように予測をして、その作図をしたのかという理由(根拠)を具体的に示すという点に新しさが見られます。この問いでは、「現状認識→分析→推論→その根拠→解決策」という、探求活動でも見られる手法が試されており、このような形の問いは、これからも多く出題されていくと思われます。

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問題の考え方

問1
 ある程度の知識がないと解けない問題です。「65歳~69歳」の階級とは、第2次世界大戦終了後、出生率が大きく上昇するベビーブームが起こった世代であり、「団塊の世代」と呼ばれています。その「団塊の世代」が結婚適齢期を迎えた1970年代前半に第2次ベビーブームが起こり、「団塊ジュニア」と呼ばれる「45歳~49歳」の階級を形成しているのです。

問2
  この問いがこの出題の一番のポイントです。まず、20年後の年齢別人口構成図がどうなっているかを予想してみましょう。「65歳~69歳」の階級は、平均寿命を超えるため、自然に減っていきます。「45歳~49歳」、「40歳~45歳」の階級はほぼそのまま年を重ね、一番隆起した部分になります。次に子どもの数を考えてみましょう。団塊ジュニアが出産年齢であったときは、合計特殊出生率が低水準であっても出産する母親世代の人口が多かったため、出生する子供の数はそれほど減少しませんでした。しかし、それ以降は、出産する母親世代の人口が減少しているため、たとえ出生率が上昇しても、子どもの数はかなり減少していくことになります。
以上のことを考えると、図は「壺型」と呼ばれる、壺を伏せたような形になり、さらに子どもの数がかなり減少しますので、逆三角形に近い「壺型」になります。

問3
 「問2から必要であると想定される施策」とありますので、「少子化を抑制するための施策」と「人口減少に適応していくための施策」の両方を考える必要があります。

①少子化を抑える施策
 子育ての経済的支援、仕事と家庭の両立支援等によって、安心して子育てができる社会的環境を整備する必要があります。出生率が上昇すれば、少子化は解消されるわけですが、その際、結婚に対する価値観が多様化していること、LGBT(性的少数者)への配慮等を考慮する必要があります。
②人口減少による影響を緩和する施策
  労働人口の減少によって、現行の年金制度や医療保険制度などの社会保障が維持できなくなります。定年延長・継続雇用の促進、年金支給年齢の引き上げ、医療費の引き上げなどの施策が必要になります。また、労働人口の減少に対する施策としては、人工知能(AI)の活用、外国人労働者受け入れの促進、働き方改革等も考えられます。
③経済社会の仕組みを少子高齢化が進んでも持続可能な形に改革する施策
 人口が増加することを前提として設計された社会経済システムを、人口が減少する社会に適応したシステムに変えていく必要があり、対症療法的な対策の積み重ねではなく、中・長期的な展望を持った施策が必要です。

 「400字以内で簡潔に述べよ」とありますので、以上の中から、自分に説明できるものを1つ選んで説明しましょう。20年後の「年齢別人口構成図」を作図させた意図を考えると、「人口減少に適応していくための施策」の方が適当ではないかと思います。少子高齢社会の問題は、さまざまな形で出題されています。答えは1つではなく、多様な考え方があり、さまざまな解決策が考えられます。一度、自分なりにまとめておくといいでしょう。
 また、現在、政府が重要政策の1つとして「働き方改革」を進めています。これは、「1億総活躍社会」を実現するための改革です。「1億総活躍社会」とは、少子高齢化が進む中でも、「50年後も人口1億人を維持し、職場・地域・家庭で誰しもが活躍できる社会」です。人口減少による、労働人口の減少にどのように対応していくかという少子高齢社会への対応が含まれていますので、一度調べておく必要があると思います。

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