担当者のつぶやき 作家ファンサイトと小論文

こんにちは。担当者Uです。


5月上旬までの期間限定で、村上春樹さんのファンサイトが立ち上がっています。
ファンの方から自由に寄せられた質問に対して、村上さんがさまざまに答えていくというものです。

職業病のUは、このサイトを見て楽しむと同時に、

「質問者が小論文の出題者で、村上さんが受験生だとしたら、村上さんの答えのいくつかは全然評価されないかもなぁ…」

などというくだらないことを考えてしまいました。

質問内容によっては、どうしても答えにくかったり、答えたくなかったりするものもあるようで、村上さんはそういうとき、敢えて質問の核心に触れなかったり、はぐらかしたり、真っ赤な嘘をついたりしています(だいたい「というのは嘘です」と正直にお答えになっています)。


例えば、「ご近所づきあいしていますか?町内会とか回覧板とかごみ当番とかされたことはありますか?」という質問に対して、「この前近所で知らないおじさんに呼び止められて云々」というお返事をされていることがありました。
このやり取り、とてもおもしろい内容だったのですが、結局、「ご近所づきあいをするのか」については最後まで語られませんでした。



でも、たぶん、多くのファンの方は、村上さんのちょっとずれた回答が返ってくることも承知のうえで、いろんな突っ込んだ質問をされているのだと思います。むしろ、そのストレートでないおもしろおかしい回答を期待すらしているかもしれません。そもそも、好きな作家さん本人から何らかのお返事をもらえるだけで、かなりうれしいことなのだろうと想像します。


実際、村上さんもこんなことを言っています。「おとなの健全なユーモア」というつもりであっても、受け取り手の気持ちによっては「真面目に答えていないでふざけている」とも思えてしまうのですね。




でも、「小論文入試」では、そういうユーモアはなかなか受け入れてもらえないでしょう。

ふだんの友達同士の会話であれば、「え、それどういうこと?」とすぐに質問できます。
「そんなこと言えるわけないじゃないか」と反論することもできます。

学校の授業や試験でも、「反論」は難しいでしょうが、「質問」ぐらいなら可能でしょう。

でも、入試の場面ではそれが許されない。
入試では時々「相手(大学)の聞きたい(問いたい)ことがわからない」という問題もないわけではありません(大きな声では言えませんが…)。

それでも「たぶんこういうことが聞きたいはず!」ということを予測して、正確に、わかりやすく、しかもちょっぴり自分をアピールできるように、文章を仕立てあげるのが「小論文入試」です。


なんだかずいぶん不利な立場に置かれているような気がします。でも、良くも悪くも、それが「入試」です。

入試問題には、大学の「で、あなたはどんな学生さんですか?これからうちの大学で勉強したいと思っているようだけど、あなたの力、意欲をちょっと見せてもらえませんか?」というメッセージが入試問題に表れています。
いい問題に出会うと、それがものすごく鮮明に表れてきます。
受験生のみなさんも、そうした大学の思いに十分こたえていけるようにならなければなりません。




…とまあ、こんなことを考えていると、「コミュニケーションの形やマナーは本当にさまざまだなぁ」と思わされます。
読者と作家がメールでやり取りするというコミュニケーションもなかなか独特ですが、「小論文入試」も、かなり独特のコミュニケーションを求められるということです。

まずは入試小論文というコミュニケーションにおける心得をよく知り、対策を練っていけるとよいですね。

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