担当者のつぶやき ノーベル賞と小論文

こんにちは。担当者Uです。


ノーベル賞、今年も日本人が受賞されました!めでたいことです。


今日のタイトルは「ノーベル賞と小論文」。

このブログでは、いつもこじつけめいたタイトルをつけていますが(苦笑)、
今回はこじつけではなく、ノーベル賞と小論文は本当に密接にかかわるんです!


昨年も話題にしましたが、ノーベル賞受賞後は、その話題がどこかで小論文入試のネタにされます。

2014年ノーベル賞のニュースは、例えば以下のように2015年度入試で出題されました(一部です)。


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●日本人3名がノーベル物理学賞を青色発光ダイオード(LED)で受賞した。青色発光ダイオードの開発により、明かりの歴史が根本的に変わった。LEDの優れた点を二つ説明せよ。また、LEDはどのような分野で使われるかを説明せよ。更に、あなたは、LEDを用いた研究を行うとしたら、どのような研究をしたいか述べよ。(山梨大・工学部・機械工学科・推薦)

●昨年のノーベル物理学賞は、日本人3名が「青色発光ダイオードの発明」で受賞した。青色発光ダイオードが、ノーベル賞授与にあたる審査の基盤となる「人類に最大の利益をもたらす発明」と認められたからである。なぜそのように認められたか、あなたの考えを述べよ。(富山大・薬学部・一般後期)

●青色発光ダイオードに関する研究成果がノーベル物理学賞を受けたことについて、次の受賞理由をもとに電子工学を学ぶ立場から、あなたの考えを述べよ。受賞理由「省エネで環境に優しい青色発光ダイオード(LED)を発明した。従来に比べ、長寿命でエネルギー効率が高い。多くの研究者が失敗する中で3人は成功した。20世紀は白熱電球が照らしたが、21世紀はLEDによって照らされる時代になるだろう」(東北学院大・工学部・電子工学科・推薦)

●2014年10月、パキスタンの女子学生マララ・ユスフザイ(17歳)が、ノーベル平和賞を受賞した。問1.その受賞理由を簡潔に述べよ。問2.教育環境が整っていない場合の不利益と女子教育の意義について、あなたの意見を述べよ。(昭和女子大・人間社会学部・現代教養学科・推薦)

●ノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんについて述べた『2014年10月11日「日本経済新聞」春秋』を読み、このコラムが読者に投げかけている今日的問題について、これからコミュニケーション学科で学ぼうと願っているあなたが考えることを、論じよ。(フェリス女学院大・文学部・コミュニケーション学科)
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いかがでしょうか。
2014年については、日本人の青色LED受賞だけでなく、マララさんの平和賞受賞も入試で扱われていたのですね。
ニュースでも大きく取り上げられましたし、国際問題や女性と子どもの権利についての貴重なメッセージが発せられたので、入試でも問われたものと思われます(そういえばどちらも女子大学で問われていますね)。


昨年の受賞ネタでは、青色LEDそのものの価値や可能性について問われています。
この傾向を考えると、今年受賞された梶田隆章氏、大村智氏の研究領域に近い学部を志望するみなさんは要注意ですね!


また、大村智氏に関して言えば、受賞時のこのような発言が注目されているようです。


「私自身が偉いものを考えたり難しいことをやったのではなく、全て微生物がやっている仕事を勉強させていただいたりしながら今日まできている」

「研究者になっても自分のやりたいこといっぱいあっても、どちらが世の中のためになるかなとか人のためになるかなとか、分かれ道に立った時はそういうことを基本にしていたと思います」


このあたり、「研究」のあり方としてとっても大事なメッセージに見えます。
これら発言が入試で取り上げられることもあるのでは…と思ってしまいます。

ノーベル賞に選ばれることだけが大事なわけではありませんが、また入試対策に「決め打ち」は禁物ですが、注目しておいて損はないように思います。

担当者のつぶやき 国勢調査と小論文

こんにちは。担当者Uです。
ごぶさたしております。


先日、Uの自宅にお役所の方が「国勢調査」について説明に来られました。
今年は国勢調査の年になっているんですね(すっかり忘れていたのですが…)。


今回の調査から、インターネット回答ができるようになっており、さっそく試してみました。
スマートフォンで画面を開き、指示にしたがってIDとパスワードを入力し、質問に次々と答えていったら…
なんと、ものの10分ほどで終了してしまいました!とっても簡単。
用紙への記入だと、どう書いたらいいかわからなかったり、書き間違えたり、ということもありましたが、インターネットならそうした心配がかなり軽減されます。
おそらく調査結果を集計する方も、書き間違いやおかしな回答を確認する作業が減り、よりスムーズな作業になるのだと思います。

便利な世の中になったものですねー。


さて、この国勢調査。
高校生のみなさんには直接はなじみがないかもしれません。
しかし、この調査結果が、小論文入試でさまざまに出題される「データ」となっていること、ご存じでしたか?


国勢調査2015のサイトに、「国勢調査でわかること」が解説されています。

上から順番に見てみると…

・総人口と人口増減率
・年齢3区分別人口推移
・人口ピラミッド
・一般世帯の家族類型別割合の推移

などなど。
どれも小論文入試でよく見るグラフではありませんか!


国勢調査の結果をもとにして、例えば、こんな出題がされています。

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●『統計トピックスNO.63』より「〈人口推計〉(総務省統計局)統計からみたわが国の高齢者」から、表1「年齢3区分別人口及び割合〈平成23年、24年〉」を読み、問1.空欄補充。〈数字〉問2.問1で示した下線部のように高齢者人口が増加した背景の理由を述べよ。(亀田医療大学・看護・推薦)

「国勢調査(平成17年)」(総務省)、「日本の将来推計人口(平成18年12月推計)」から、日本の現在の人口ピラミッドと2055年の推定を示した図を読み、日本経済の将来の状態と、それに対処するための政策を労働力との関係から論述せよ。(関西学院大学・AO)

●資料1「日本の人口の推移」、『平成25年男女共同参画白書』(内閣府男女共同参画局編)から、資料2「OECD諸国の女性(25~54歳)就業率」、資料3「女性の年齢階級別労働力率の推移」を読み、女性の社会進出について、資料から読み取れる日本の現状を説明し、それを踏まえて、女性の労働参加を促進するための方策について、あなたの考えを述べよ。そのうえで女性の労働市場への参入によって、日本の経済や社会にどのような影響を与えるか、述べよ。(広島経済大学・経済・推薦)

●わが国の人口動態に関する『昭和45年国勢調査』(総理府統計局)からFig.1、『平成24年国勢調査』(総理府統計局)Fig2(英語表記)を読み、あなたが考えるわが国の人口問題について論理的に記述せよ。(宮崎大学・医・看護・推薦)

●日本の人口構造と医療の問題について述べた文章と、「国勢調査/人口推計2012」(総務省)、「日本の将来推計人口2012」(国立社会保障・人口問題研究所)、「人口動態推計2011」(厚生労働省)から、「日本の人口の推移と将来予測」、「日本の人口の将来予測」、「一次・二次・三次予防の役割とそれに関与する主要な医療職種」、『人口動態推計2011』(厚生労働省)から「1993~2011年までの主要な医療職種の従事者数」を読み、1.これからの日本の①総人口の変化、②人口構成の変化、③医療環境の変化について考察せよ。2.今後の日本で求められる医療のあり方と医療職種の従事者の養成のあり方について、あなたの考えを述べよ。(北里大学・医療衛生・推薦)
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いかがでしょうか。
包括的な調査なので、さまざまなデータがさまざまな出題で活用されていることがよくわかります。
志望先の入試でデータがよく出る傾向にある場合、国勢調査をもとにしたデータを予習しておくと、有効かもしれませんね。

担当者のつぶやき 地域の防災情報と小論文

こんにちは。担当者Uです。
ごぶさたしています!

夏季休業を終え、バタバタと過ごしていたら、8月ももう少しで終わりを迎えるところまで来てしまいました。
月日の流れるのは早いものです…。


さて、今週は週初めから台風に見舞われることとなりました。
広島でもかなり激しい暴風雨となりました。


そんなとき、手早く情報が得られるのが「防災情報メール」です。
みなさんがお住まいの地域にもこのようなサービスがあるかと思います。

今回、Uの携帯電話には、次のようなメールが届きました。
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以下に全文を表示します。


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> ○○区災害警戒本部から避難準備情報の発令についてお知らせします。
> 平成27年8月25日午前11時50分、広島市に土砂災害警戒情報が発表されました。
> これまでの降雨で、土砂災害の危険性が高くなっているため、次の地域に避難準備情報を発令します。
> 立ち退き避難が必要な場合は、いつでも避難ができるよう避難経路の確認や非常持ち出し品等の準備を始めるとともに、今後の気象状況に十分注意してください。
> 【対象地域】  ○○区内の土砂災害危険箇所です。
> 高齢の方、障害のある方、小さい子供をお連れの方などで、避難に時間がかかる方は、避難を開始してください。
> 避難に助けが必要な方は、支援者と連絡を取り合うなどして、避難を開始してください。
> 準備しておいた飲料・食料や毛布等を持って避難してください。
> 【開設予定避難所】  ○○小学校、△△小学校、介護老人福祉施設□□□□(▲参▲学区)、(以下略)
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市にメールアドレスを登録しておけば、このような情報が随時届きます。
これは便利です。

自治体から災害時に発表される避難情報は、右に行けば行くほど、危険度が高いそうです。

 注意喚起→避難準備情報→避難勧告→避難指示

Uが受け取ったメールは「避難準備情報」ですから、注意は必要だけど、
まだそこまで危険度が高くなかった、と言えそうですね。
万一緊急性の高い「避難勧告」や「避難指示」が出ても、すぐに行動に移せそうです。



しかし。
私たちは、直接あまり大きな災害に遭うことがないため、つい「まあ大丈夫でしょー」という思いにとらわれてしまいます。


こちらの記事によると、自治体が住民に避難勧告などを行う際に注意すべきポイントが「できるだけ早く避難を呼びかけること」と「できるかぎり地域を絞り込んで呼びかけること」だということです。

「早く避難してください!」と言われたにもかかわらず実際に被害がなかったら、「なんだ、そんなものか」と思い、次に避難の連絡が来ても「前も大丈夫だったし、今回も大丈夫なんじゃない?」と思い、避難行動に移らなくなるおそれがあります。
このようなことが続くと、せっかくの連絡が意味のないものになってしまいます。


メール等の力で「できるだけ早く避難を呼びかけること」は改善が進んでいるように感じますが、「地域を絞り込んで呼びかけること」というのは難しそうですね。



「防災」については、小論文入試でも近年よく出題がみられます。
地震の対策についてはもちろん、最近は豪雨土砂災害や火山の噴火などについても問われるようです。


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●①大雨や台風、地震、噴火などの自然災害による被害のなかで、あなたの印象に残っている事例を一つ紹介せよ。実際に体験したものであっても、そうでなくても構わない。②①で記述した被害を防ぐために、どのような技術的な対策が用いられているか、対策の限界を含めて説明せよ。③②の対策の限界をふまえて、これからどのように自然災害に備えていくとよいか、あなたの考えを述べよ。
(大阪教育大学・技術教育専攻・推薦)

●御嶽山の噴火から1カ月がたち、火山周辺の自治体が防災計画見直しに動いていることについて述べた『2014年10月29日「日本経済新聞」社説』を読み、大規模災害に対する備えの現状と課題について、課題解決の方策を含め、考えを述べよ。
(国士舘大学・政経学部・推薦)

●自然災害により犠牲者が多く出ている。人が突然被災したときにどの様な防御装備が必要か。普段から持ち歩ける携帯性のあるもの、もしくはウェアラブルなものを生体医工学分野に立脚して考案し、想定する災害とそれに対する考案したものの有効性について、アピールせよ。
(東洋大学・理工学部・推薦)
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東洋大学はユニークな出題ですね。
防災にはハード面(設備など)の対応とソフト面(避難の方法論など)の対応がありますが、志望先の分野に関連させて、防災対策について考えることも有効かと思います!

担当者のつぶやき 繁忙期!

こんにちは。担当者Uです。


最近、とっても忙しいです!!
この時期は、夏休み前にテストを実施された学校の添削処理を行い、また次年度の教材企画を打ち立て、先生方に教材内容をご紹介するパンフレットの中身を考えて…と、いろんな仕事を同時進行で行なわなければなりません。
各学校の皆様からお送りいただいた答案の添削指導&返送のことを考えていると、頭の中は1か月先のスケジュールでいっぱいになります。
今はまだ7月ですが、頭の中は既にお盆がちらついている…という状況です。



そんなとき、お問い合わせの電話等で日本全国の高校の先生方とお話をすることがあるのですが。
Uが今の仕事を始めて、しみじみ思うのが、「同じ名前の学校って実はけっこう多いなー」ということです。


ざっと挙げてみると、このような感じです。


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・吉田高校
→新潟県、山梨県、静岡県、広島県、愛媛県にあります。


・城北高校
→東京都、広島県、徳島県、熊本県にあります。
「○○城北高校」という名前であれば、もっとたくさんあります。


・松陽高校
→神奈川県、兵庫県、鹿児島県にあります。


・勝山高校
→福井県、大阪府、岡山県にあります。


・甲南高校
→滋賀県、兵庫県、鹿児島県にあります。
ちなみに兵庫県には「甲南女子高校」もあります。


また、呼び名は違うのですが、漢字は同じ、という例もあります。
・国分高校
→千葉県では「こくぶん」高校、鹿児島県では「こくぶ」高校だそうです。


・飯山高校
→長野県では「いいやま」高校、香川県では「はんざん」高校と呼ぶそうです。

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すごいですねー。ざっと挙げただけなので、他にもたくさんあると思います。
時々、「あれ、この学校は…何県だっけ?」と思うことがあるので、本当に気をつけてやっています。
でも、先生からお電話いただくときは、だいたい「○○県の□□高校ですけど」とおっしゃっていただくので、間違うことはありません。ありがとうございます!



今日はただの「学校あるある」で、全然小論文学習のためになる話ではありませんでした。すみません。
有益な情報をリアルタイムで発信することを目指していますので、よろしくお願いいたします!

担当者のつぶやき 自然エネルギーと小論文

こんにちは。担当者Uです。


「エネルギー問題」は、小論文でもよく話題にあがるテーマです。
このまま原発を使い続けていいのか、自然エネルギー(再生可能エネルギー)をどう普及させていくか、化石燃料はCO2を排出するし、資源にも限りがあるし、どうするか…などなど、さまざまな観点から問題が作れます。


その中でも「再生可能エネルギー」は、基本的には「よい技術」として将来を期待されているように見えます。
特に太陽光発電。国が進めている支援政策もあり、ここ数年で、家の屋根やちょっとした空地などで太陽光パネルを見かける機会が増えていますよね。




しかし、急激に太陽光パネルの設置が増えるということは、そのパネルが壊れて使えなくなったときに「ごみ」になる、ということです。


先日、こんな記事が出ていました。

2015年6月23日「毎日新聞」太陽光発電パネル:2040年度廃棄は330倍80万トン

「設備の寿命を25年とし、リサイクルが進まなかった場合」という想定で、廃棄量は30年度に約3万トン、40年度には約80万トンに達する見込みだということです。
ちょっと想像がつかない量ですが、12年度に埋め立てられた産業廃棄物の6%に相当するというのですから、かなりの量です。
これをすべて埋め立て処分するとなると…とても「太陽光発電が環境にやさしい」とは言っていられません!


でも、これはあくまで「リサイクルが進まなかった場合」のお話です。
記事では、「17年をめどに、リサイクルを推進するシステムの構築を求める。」とありますので、現状ではリサイクルを推進するシステムはまだ確立されていないようです。
このまま放置すると大変なごみ問題に発展しそうですが、何とかそれを食い止めないといけない、という状況のようですね。


少し前であれば、このような問題はあまり注目されなかったかもしれません。
「太陽光発電は環境にいいんだから、どんどん設置を進めよう!」という意見が強かったのではないでしょうか。
でも、そんなに簡単じゃないな…ということが、だんだんとわかってきているのが今の状況だと思います。


小論文を書くときにも、少しこうしたマイナス面に配慮したうえで解答ができると、「お、よく知ってるな」と評価を上げてもらえるかも…。

小論文教材のご案内 更新(未来設計ワークノート)

こんにちは。担当者Uです。


今日は主に高校の先生向けの記事になります。
弊社の高等学校用小論文学習教材のご案内ページが更新されました。
新刊「未来設計ワークノート」のご案内が追加されています。


この「未来設計ワークノート」については、制作を担当した後輩のMさんにその魅力を語ってもらいたいと思います。
では、Mさん、よろしく~。



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第一小論Net 担当者ブログをご覧の皆さま、こんにちは。
新刊『未来設計ワークノート』の制作を担当しております、Mと申します。
この場をかりて、新しくできた教材の紹介をさせていただきます。



『未来設計ワークノート』では、「自己肯定力」「コミュニケーション力」「社会規範」「社会貢献」の4つの項目について学習します。


この4つについて、「自分に自信を持とう」「コミュニケーション力を高めよう」「社会のルールを知って行動しよう」「社会に貢献しよう」といった言葉をよく耳にしませんか。
ただ、そう言われても、どうしたらいいのかわからないと感じる人が多いと思います。



しかし、この4つの力はどれも、社会に出て行く前に身につけておかなければならないもの、身につけることが求められているものです。
なぜなら、「自己肯定力」「コミュニケーション力」「社会規範」「社会貢献」は、社会の中で自分らしく活動していくために必要になるからです。



この教材では、たくさんのワークに取り組むことで、「自分の長所って気づかないだけでこんなにあるな」「よいコミュニケーションをとるのって意外に簡単だ」「ルールって自分と他者が快適に過ごすためにあるんだ」「自分を活かして人の役に立つために、こんな行動ができるな」ということに気づくことができます。
また各学習項目の最終ページでは、学校生活の中で実践する「行動目標」を決めていきますので、気づいたことを実際の行動に移す訓練もできます。



今よりもちょっと社会を意識した行動ができるようになり、そしてそれは社会に求められている力を身につけることにつながっていく――これから自分のキャリアを考え始める生徒のみなさんに、ぜひ使ってほしい一冊です。
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ありがとうございました!
うーん、自分よりよっぽど紹介がうまい…。


と、Uのひがみはさておき、いかがでしょうか?
ぜひ先生方には教材見本を手に取って、採用をご検討いただけたらと思います。
よろしくお願いいたします!!



※本書は学校採用専用品のため、原則、高校生、一般の方への販売はいたしておりません。ご了承ください。

担当者のつぶやき 駅のホームと小論文

こんにちは。担当者Uです。



突然ですが問題です。


「酔った客が駅のホームから線路に転落する事故が後を絶たない。この事故を減らすためにはどうするべきか、あなたの考えを述べなさい」


小論文入試でこんな問題が出た…という話ではありません。あしからず。

お酒に酔ってホームに落ちるなんて、高校生のみなさんからすれば「そんなに飲むなよ!」と言いたくもなるのでしょうが…。
でも、転落事故が起きているのは事実ですし、こんな理由でお客さんの命が犠牲になるのは避けたいところですよね。
さあ、どうすればいいでしょう?



この問題、実は既に対策が進められています。JR西日本の取り組みです。

Uの最寄り駅でもこの取り組みがなされていたので、写真を撮ってきました。


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わかりますか?
ベンチに座った人の向きが、線路と平行になるようになっているのです。


どうしてこれだけで転落防止につながるのか?
それについては、以下の記事でくわしく解説されています。


2015年3月24日「神戸新聞NEXT 酔って線路に一直線 ホーム転落事故の9割 JR西が調査」

一部の新幹線の駅のように、ホーム全体に壁を作るという方法も考えられますが、とてもお金がかかるので、すべての駅に設置するのは大変です。
でも、ベンチの向きを変えるだけなら、それほどお金はかけなくてすみそうです。
これだけで少なくとも酔った人の転落防止を防ぐことができるのであれば、大きな改善ですよね。



みなさんに注目してもらいたいのは、「酔客の事故を科学的に分析」している、というところです。


小論文のよくない解答例として代表的なのが、「私たち一人ひとりが気をつけるべきだ」というものです。


この答え、「間違い」とは言い切れません。

しかし、そもそもどんな気持ちでいれば「気をつけた」ことになるのでしょうか。
いろんな人に、どんな方法で気をつけさせればいいのでしょうか。
「気をつける」だけで本当に問題は解決されるのでしょうか。

…と、いろんな疑問がわいてきて、結局「それって説得力ないよね」ということになってしまうのです。


しかし、このように酔ったお客さんの動きをしっかり分析し、その傾向をつかんだうえで対策を打ち出していたら、ものすごく説得力がありますよね。

もちろん、実際の小論文の試験において、このような「分析」ができることはまれですが、少なくともこうした科学的な分析が、提案する解決策の説得力を高める材料になるのだということは重要です。



ある社会問題が提示し、その解決方法を提案するような小論文の構成を「問題解決型」と言いますが、この問題解決型の構成をとる場合に、「問題点の分析・考察」が重要となります。
何が問題なのか、なぜ問題が生じてしまうのか、をしっかり考えることができたら、おのずと解決策も見えてくるからです。

小論文の問題を解く際も、こんなことを考えながら構成を練ることができたらいいかもしれません。

担当者のつぶやき 古い本もおもしろい

こんにちは。担当者Uです。

ふと思い立って、昔買った村上春樹さんのエッセイ『村上朝日堂はいかにして鍛えられたか』を読んでいます(そう言えば、以前も村上さんの記事を書いてしまいましたね…最近マイブームです)。
国語の教科書に採択されたことのあるエッセイも載っている、なかなかおもしろい本です。

元ネタは1995年~1996年の『週刊朝日』に掲載されていたコラムだというので、今からもう20年も前の内容の本になるわけです。
じゃあ現代に生きる私たちには役に立たない、古い内容なのかと言うと…


実はそんなことないのです。


例えば。

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都内の某デパートでエレベーターに乗った。そのエレベーターには、車椅子を使う人のために、低い位置に専用のボタンがついていた。(中略)
ところがエレベーターの入り口には、「車椅子ご利用の方は、なるべく付き添いの方と一緒にご利用下さい」と書かれた札がはってあった。僕はこれを読んで本当にびっくりした。
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さて、村上さんは何にびっくりしたのでしょう。続きはこうなっています。



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だってそうでしょう。車椅子のための専用スイッチをわざわざエレベーターにつけておきながら、「なるべくなら誰かについてもらって来いよな。一人で来るなよな」というものの言い方はないだろうよ。だったらはじめからそんな専用スイッチをつけなければいい。付き添いの人がいるのなら、その人が代わりに押してくれるわけだから。もし車椅子専用スイッチをつけるのなら、車椅子利用者が一人で気持ちよく買い物ができる環境を整備するべきだ。(中略)
これを書いた人は、その情けない文章を書くことによって、脚に障害を持った人の心を自分がどれほど傷つけているか、感じなかったのだろうか?
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うーん確かに。
この札を読んだ方の中には、「どこが問題だったのだろう?」と思った人もいるのではないでしょうか。
恥ずかしながら、Uもたぶんこの札を見せられても、すぐに村上さんのような思いに至れなかったのではないかと思います。
でも、確かに車椅子の人がこれを読んだらいい気はしないでしょうね。

それにしても、最近のデパート、エレベーターはどうなっているんでしょう。
さすがに20年も経っているのだから、このような札がないことを祈りたいものですが…。
今度、デパートに行ったら見てみます!


さて、エレベーターの話題は少し時代の流れを感じる内容でしたが、次に紹介するのは、逆に全然時代の流れを感じさせない文章です。


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世の中に「これからの二十一世紀、日本の進むべき道がよくわからない。見えてこない」と発言する人々がいるけれど、そうだろうか? 僕は思うのだけれど、現在我々の抱えている最重要課題のひとつは、エネルギー問題の解決――具体的に言えば、石油発電、ガソリン・エンジン、とくに原子力発電に代わる安全でクリーンな新しいエネルギー源を開発実現化することである。(中略)
でも技術的に原子力を廃絶できるシステムを作りあげることに成功すれば、日本という国家の重みが現実的に、歴史的にがらっと大きく違ってくるはずだ。「いろいろあったけど、日本はその時代やっぱりひとつ地球、人類のために役に立つ大きなことをしたんだな」ということになる。
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東日本大震災の後に書いたかの文章ですが、違います。1995年頃の文章です。
この主張は全く色褪せませんね。
著者に先見の明があるとも言えますし、この日本が20年ぐらい前から何にも進歩していないと言えるかもしれません。




さて、いかがだったでしょうか。
どちらも、20年前も現代も、変わらず社会で問題となっているできごとです。前者はいくぶん改善がみられているかもしれませんが、後者については変わらぬ課題として残っていますよね。
ごくごく当たり前のことですが、その本が書かれた時代も考えつつ、今にどう生かせるか、と思いながら本を読むと、また新たな発見があるものだと思いました。